「日高晤郎ショー 最後の日」1時台Part1
1時(13時)少し前、私はスタジオに入った。
驚いたのは、晤郎さんの姿より、声だった。
廊下でスピーカー越しに聴いていたのは、体力の急激な低下からいつもよりずっと弱いかすれ声。
しかし実際にスタジオ内で直接聴く晤郎さんのそれは、調整室で増幅されたスピーカー音声だったのだと、(ラジオも同じ)その時に知った。
目の前には、文字通り命をザリザリと削り落としながら言葉を発し続ける晤郎さん。
その周囲には、その命の炎を守護するかのように6名の選ばれし歌人。
私は、スタジオのお客さんの間を抜けてスタジオ最後尾、Kさんの席に座った。
スタジオ内の顔なじみの多くの常連さんたちが、晤郎さんの「今」を懸命に応援していた。
晤郎さんの体の辛さを補うように頷き、笑い、拍手を絶妙のタイミングで送っていた。
歌人もまた、一つの思いを胸の奥に仕舞い、晤郎さんの一挙手一投足に呼応しようと集中しているように見えた。
1時、イントロが流れ始める。
晤郎さんは静かに、カフキーを上げた。