晤郎さんファン列伝① 靖孝さん(日高晤郎さんを遺すという事)

ご本人との相談と了解を得て、靖孝さんのお名前で進めさせていただきます。
川柳の世界では、こうして名前を出すのが常識だとか。
インターネットでは名前を出すのに、そうとう注意を要しますが、まるっきり違う性質が違うことに驚いています。
では、本題に参ります。

☆川柳作品集「生きてます!詠んでます!2019」

靖孝さんは人生の大先輩。
頭部が、ゆでたまごみたいなおじいちゃん。
人柄は誠実で、少々すけべ。
言葉が豊富で研究熱心な行動派。

その靖孝さんが、日高晤郎さんに宛てた昨年一年分の川柳ノートを完成させたという。
これは絶対読ませていただきたいと、私は靖孝さんがお住まいの函館まで押しかけて直談判。
とうとうお借りできた靖孝さんの作品集「生きてます!詠んでます!2019~晤郎さんへの報告書~」
靖孝さんと川柳談義

☆珠玉の川柳たち

「生きてます!詠んでます!2019~晤郎さんへの報告書~」
そこには、2019年を月ごとに分けて、その月に誕生した作品が手書きで記されていました。
収録された句は、全部で317句。
手書きなのに書き損じ無し!
恐るべしその集中力!!

ここに記された川柳は、靖孝さんご自身の老いをテーマにしたもの。
政治に対するチクリとした風刺。
煩悩や人生への慈しみ。
エトセトラ。

2~3、ん???と、分からない作品も有りました。
それは結局私の不勉強のなせる業。
でもたいていが、おお!!と膝をポーンと打つような爽快な味わい。
中には、切ないやら哀しいやらの作品も有りましたが、川柳の味わいに魅了されていました。
創る方は大変だけど、読んでる私のような素人にもパッと映像が浮かぶような簡潔さ。
本当に、川柳って、面白くて深くて、目線が私達の普段の生活の高さなんですね。
日高晤郎さん三回忌・なんでやねんにて

☆川柳名人・靖孝さんの正体

元・函館のタクシードライバーさん。
年齢は、日高晤郎さんと同い年。
勤務中のカーラジオはSTV。

2005年10月1日、靖孝さん61歳の秋。
晤郎さんへの思いが募ってどうしても抑えきれずに、日高晤郎ショー・スピカ公開放送に初参加。
以降、「晤郎さん命」の人生。
新生STVラジオ・日高晤郎ショースピカ公開放送
2006年1月より、番組内で川柳コーナーがスタート。
番組のお客さんから広く川柳の募集も開始。
そこに毎週作句して作品を送るようになった靖孝さん。

しかし、日高晤郎ショーで公募した川柳もなかなか集まらず、なかには標語もどきや駄洒落も混じり品質低下でこの企画は二ヶ月で打ち切り。
そんな中、靖孝さんも晤郎さんから「こんなの川柳じゃない」と指摘を受けたのでした。

そこから靖孝さんは一念発起。
基礎から川柳を学ぶために国立市にあるNHK学園川柳通信講座受講開始。
この時62歳。
新たな学びの第一歩を踏み出したのです。

NHK学園川柳通信講座での勉学は、四年間。
その後、専門誌「川柳マガジン」等への投句や、川柳結社に加入と積極的に活動。
また、川柳研究社幹事着任と八面六臂の大活躍。
これもすべて、日高晤郎さんに恥ずかしくないようにという思いから。
つまりこれらは靖孝さんの心の内に、今も日高晤郎さんは健在という証。

「晤郎さんはね、私の人生に沢山の宝物をくださったんですよ」と靖孝さんはにっこり笑う。
その宝物の中に、先日お亡くなりになったゴスペルシンガーのNatsukiさんもいらっしゃる。
「大事な人たちは、みんな私を置いて旅立っちゃうんです。少しは寂しいけど、残された私が落ち込んでたら、お二人に恥ずかしいですから。」と、一層精力的に川柳に打ち込むことを秘かに決めた、そう言いながら靖孝さんは、ちょっと照れるように笑った。

☆晤郎さんの命日、なんでやねんにて

その日、靖孝さんと私は、並んでカウンターに居た。
お借りしていた「生きてます!詠んでます!2019~晤郎さんへの報告書~」を、そっと返却。
なんでやねんの、特製おでんを二人でつつきながら、川柳談義。
靖孝さんの川柳に対する誇りと情熱を感じながら、私もこういう齢の重ね方をしたいと思う。
靖孝さんと川柳談義
「晤郎さんに川柳の素晴らしさを教わったのだから、私が作品を生み出し投句し続けるという事は、晤郎さんを遺すと言うことなんですよ」と靖孝さんは、現在76歳。
そして話はこう続いた。
「もしもあの時、晤郎さんから川柳の世界を教えて頂かなかったら、私は今頃、タクシー運転手をリタイヤしたただの老いぼれだったと思います。」

函館の靖孝さん、日高晤郎さんと3週間違いの同い年。
晤郎さんが生きることの叶わなかった今を、川柳に刻みながら歩いてらっしゃる。
今でも、一つの句が完成するたびに、空の向こうの晤郎さんに報告は欠かさないそうです。

靖孝さん、いつまでも元気で素晴らしい作品を生み出し続けてくださいね。
晤郎さんが、生きたくても生きられなかった時間の中で。
存分に。

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