晤郎さんへの手紙に掛ける時間は、1日30分と決めていた。
それ以上の時間を掛けると自分の負け。筆を止めた。
それ以上時間を掛けていたら、他の事に支障が出る。
でも1週間に30分なら文句は出ないだろうというのが発端。
でもその時は集中する。
誰も声を掛けてはならない。
そんな感じ。
たまに、良い感じで来ていて、あと10分あれば完成という時は、たまにズルして40分。
要は、集中。

それと同時に手書きの辛さも圧し掛かる。
誤字一文字でもあれば、書き損じ一文字でもあれば、全部破棄して一から書き直し。
これ、かなりの緊張。

30分で一文字のミスもなく、毎回指定枚数の便箋に残り一文字も書けぬ位にきっちりと書き込む。
これ、20年やったのだから相当な修行だったな自分としては。
今、しみじみ思う。良くやったと思うし、良くやれたと。

「手紙はね、その相手の事をどれだけの時間かけて想ったかという証でもあるんだ、いつもありがとう。」
晤郎さんからスタジオ入口角で頂いたその言葉は、私の宝物の一つとなっている。