5月6日関さん
☆母からの要請
covid-19の変異株が急速に拡大している。
母の住む熊本も例外では無い。
当然外出自粛。
そんな母から相談を受けた。
着物に関する、とある物の調達。
私の守備範囲外の要請だった。
「あんたい、これこれこういうとが欲しいと。
なんとかならんじゃろか?」
日本語に訳すと、あのねこれこれこういう物が欲しいのだけど、買って送ってくれる?
最初に思いついたのは、インターネット。
いわゆるネットショップ。
ちゃっちゃと検索してお目当ての物は見つけたのだが、どうも味気ない。
折角の母からの要請、こういう心の込め方で良いのかい?と、誰かが背中越しにつぶやいた気がした。
ふと、晤郎さんの素敵な着物姿が浮かんできた。
その後にゆっくりと、せき呉服店の名前も浮かんできた。
そうだ、この機会に、せき呉服店に行ってみようと思い立った5月6日。
そう、晤郎さんの日。
☆せき呉服店
まずグーグルで検索。
なんと、本店と円山店があるという。
本店まではちょっと遠いので(運転に自信が持ててない)円山店に行くことに。
そしてまたグーグルマップ。
御存知と思うが、地図検索から実際のカメラ映像に切り替えられる。
ん??
呉服店らしきお店が見当たらない。
電話番号も分からない。
こうなれば、行ってみるしかない。
というわけで、円山界隈に着いた。
着いたものの、カーナビなんて気の利いたものなど生憎持ち合わせてはおらぬ。
後は勘です、勘。
せき呉服店円山店は、私にとってはちょっと分かりづらい所にあった。
そして私がイメージしていた呉服店とは違っていて、モダンな感じだった。
そのイメージの違いで、かのグーグルマップでも見つけられなかったんだと気づいた。
いや、マップで当に見つけていたのに、私が、呉服店と気づかなかっただけだったのだ。
日高晤郎さんが愛した呉服店。
そう思って急に、店の前で恐れが出てきた。
私みたいな、着物についてなんの造詣も持ち合わせていない男が、暖簾をくぐって良いのだろうか?と。
こういうのを、敷居が高いという。
ちょっとビビった私は、こう思う事にした。
これは、母のお使いなのだ、私は代理で頼まれただけだ。
もし浮いてしまったらごめんなさいと退出して、母にもまたごめんなさいと謝るだけだ、お役に立てなかったよと。
(、、、こう思う事にしたって書いてけど、読み返すとそのまま事実ではないか)
意を決して私は、高い敷居をまたいだ。
奥から、物腰の柔らかい男性が出て見えた。
笑顔の素敵な(こう書くと、ありきたりなのが悔しいけど)円山店店主、関琢也さんその人だった。
この後、私は関店長と少しだけお話をして、この呉服店に魅了されて行く事になる。
この日は、そんな晤郎さんの日。