読書~青嵐の坂

さて、葉室麟の扇野藩シリーズも今作が最後。
返す返すも、まだお若くしてお亡くなりになったことが残念でなりません。
仮にご存命であったなら、この扇野藩シリーズももう少し続いていたのかもしれませんし。

ただしこのシリーズも、どの作品から読んでも問題はありません。
それぞれが、扇野藩内で起こった違う時代の違う話ですから。
そしてどの作品の登場人物たちも本当に魅力的。
葉室麟 扇野藩シリーズ
今回の青嵐の嵐、これもまた私は心底、魅了されました。
現代の政治家さんたちに、主馬や慶之助のような人物が居たなら、、、と悔しい気持ちにもなります。
葉室麟 青嵐の嵐

青嵐の嵐の導入は、以下の通り。

扇野藩では、お狐火事と呼ばれる大火が起こり、城下の大半が焼失。
そしてその秋には年振りとなる大雨で大凶作となった。
それらの事で藩の財政は破綻寸前。
そこで藩主・定家は、郡代である檜(ひのき)弥八郎(やはちろう)を中老に抜擢し藩政改革を進めさせていた。

ところが、この改革に反発していた家老たちにより罠にはめられた檜弥八郎は、「自分の跡を継ぐのは、あの者だろうか」という謎の言葉を残し、切腹。
葉室麟 青嵐の嵐
その娘の那美は、藩の指示で親戚の中でも最も貧しい矢吹主馬(やぶきしゅめ)に預けられることになる。
那美十三歳、主馬二十代半ばの事だった。

そこから三年経過、弥八郎切腹からは四年が経った頃。

主馬は、弥八郎の村まわりのお供を命じられていた身。
弥八郎亡き後も、弥八郎に命じられていた三十年前の大飢饉「白骨おろし」について調べていた。

一方江戸では。
家督相続を翌年に控える次期藩主の仲家の元、弥八郎の嫡男である檜慶之助が静かに、堀川国広の手入れをしていた。
堀川国広は、父、檜弥八郎が切腹の折に用いられた短刀。
弥八郎とは疎遠であったが、そこは親子。
父を切腹に追い込んだ家老への復讐と、父が成しえなかった藩財政の立て直しを心に誓う慶之助。
そこには、父から一目置かれていた主馬への嫉妬も混じっていた。

葉室麟 青嵐の嵐

とまぁこういう冒頭部分。
ここに、三十年前の白骨おろしの真実が絡んできて、弥八郎の最後の言葉は誰を指しているのかという事も徐々に明らかになるようなならないような、、、。
父と子、腐りきった藩政の立て直しを通して、言葉にならない言葉たちが交錯して物語を紡いでいきます。

本当に、現代の政治家たち。
主馬と慶之助と那美の爪の垢でも煎じて目薬としてその澱んだ両目にタップリ注ぎ込みなさい!!とでも言いたい。
読後になんとも深い余韻の残る物語でありました。
葉室麟 青嵐の嵐

とにかく葉室麟。
良いです!
これにて扇野藩シリーズは終了。
読めて大満足の四作品でした。

明後日から長旅ですから、そうですね、旅から戻ったら折を見て、葉室麟さんについて書こうかなと思っております。
とにかく、葉室さんの時代小説の持つメッセージ性が良いんです。
これは是非、書いておきたいなと思います。

葉室麟 扇野藩シリーズ

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