第三回席替えクジ引きの賑やかさの中、晤郎さんは戸川よし乃さんに言葉をかけた。体温のある言葉だった。

人生風味・文の味わいに入る前のCM中、試食のKUTTAを歌人が廻している時、遠慮して食べなかった戸川よし乃さんが晤郎さんから叱られた。晤郎さんはそのことを、遺言だと表現した。晤郎さんの内側の思いが表面に出てきた瞬間だった。

晤郎さんが人生最後に召し上がったカップラーメンは、東洋水産のKUTTAカレー味。食事も摂れない状態なのに、晤郎さんはマイクの前で美味しそうに。全てが壮絶だった。耳をすませば、マイクがそれを拾っている。ラジオに命を懸けた晤郎さんの、紹介する商品に対する礼儀と姿勢が垣間見える時間だった。

1時台最初の曲は、吉幾三さんの「男うた」。この放送の17日前に発売されたばかりの吉さんの新曲だった。

優しい放送の嘘もある。私たちがあの日、ラジオやスタジオ廊下で聴いていた晤郎さんのトークの声量は、その部類に入る。このように見事な、温かい血の通った嘘に、私はこの日心から身を委ねた。