さだまさし「青の季節」歌詞の一考察

昨日、2026年8月15日分のうたノしおりを記事にしました。
その中で、お茶の水と電車と聖橋の話がでたので、すぐにさだまさしさんの名曲「檸檬」が頭の片隅に浮かんだのです。
檸檬の歌詞にはこうあります。
「食べかけの檸檬 聖橋から放る 快速電車の赤い色が それとすれ違う」
この色彩と動きの情景、名曲でしょ。
さだまさし 檸檬
と同時に、同じくさだまさしさんの名曲「青青の季節」についても、この際、調べてみたくなったのです。
恋と旅の記憶と喪失感と循環を歌いこんだ名曲なのですが、私は長年、歌詞中に出てくる「四月の鯨」の意味が分からなかった。
さだまさしさんの歌詞は、精巧に緻密に組み上げられた繊細パズルに似ているとは、さだまさしファンならば周知の事実ですから。

ということで今日は、お盆明けから間もないということも有り(なぜだ?なぜそうなる??)、時間的に余裕があるのでその考察をしてみたいと思い立ちました。
一見、意味の分からない四月の鯨。
これには間違いなく絶対に確実に、これには深い意味があるはずですので。

では「青の季節」について、以下、各歌詞に込められた意味を深く掘り下げて考察していきます。

なお、著作権保護のため歌詞の全文は掲載しません。

全体の歌詞を確認しながら読みたい方は、公式歌詞サイトの歌ネット「青の季節」歌詞ページを開きながらお楽しみください。

さだまさし「青の季節」歌詞ページ(歌ネット)

さだまさし さよならにっぽん

最初の二行。
「あの日~ステンドグラスの青」までの部分の分析です。

二人が並んで腰かけ、眺めた五枚のステンドグラスのある場所がどこかは、青の季節が収録されているアルバム「さよならにっぽん」のライナーノーツの記載されています。

場所はスイスのチューリッヒ。
水質が大変高いリマト川の岸辺に立つ教会で、名をフラウミュンスターがその舞台です。
9世紀に女子修道院として建設されたのだそうです。
フラウミュンスター教会
そしてこの教会で有名なのが、マルク・シャガールが作った五枚のステンドグラス。
預言者窓、ヤコブの窓、キリストの窓、ザイオンの窓、ローウィンドウ。

この五枚のステンドグラスの内、ヤコブの窓と、ローウィンドウの主な色が、青となっています。

スイス フラウミューンスター協会 ステンドグラス

その内のヤコブの窓が、写真の青いステンドグラスです。

描かれているのは、天へ続いているヤコブの梯子(ハシゴ)と呼ばれるものです。

ここには、神による祝福と、信仰の試練が描かれているのだそうです。

ローウィンドウは、律法の窓とも言われているそうで、その律法とは、ユダヤ教やキリスト教で、神が決めた宗教上・倫理上の規則や掟の事を指しています。

スイス フラウミューンスター教会

青の季節に登場する彼氏と彼女は、かつて二人きりで、並んで座ってこの五枚のステンドグラスを見ていたという思い出の描写から、歌が始まります。
さだまさし「青の季節」歌詞ページ(歌ネット)

「若葉のしずくが~青の季節」までの部分の分析です。

植物の葉に付いた水滴が、ゆっくりと集まってやがて大きな河になるように。
そんな水の循環に重ねるように。
一緒にスイスへ旅をした彼との人生が、これからも穏やかに続くと信じ切っていた若かった時代の思いが描かれています。

1番の歌詞の最後の行に「信じた」と、過去形のたった一言で、彼との別れが伝わってきます。
果たしてそれは、恋の別れなのか。
はたまた、永遠の別れなのか。
1番の歌詞からはまだ、それは分かりません。
水滴
さだまさし「青の季節」歌詞ページ(歌ネット)

心象風景を織り込みつつも情景描写が主体だった1番に対し、2番は少々難解な作りになっています。
「海辺の仏舎利塔(パゴダ)~もう一度出会えそうで」までの部分が2番となります。

導入部で隣に座って共にステンドグラスを見ていた人は、緩やかな時を過ごして共にもう歩いておらず、冒頭から仏舎利塔、つまり仏教の納骨堂が象徴的に登場してきます。
そんな背景は一旦、横に置いておきまして。

まず、海辺にある仏舎利塔の分析。
導入部でスイスのキリスト教教会が描かれていたのに、2番では仏教の仏舎利塔。
これは特定に囚われない、普遍的な宗教的に共通する死生観がそこに込められている気がしてなりません。

またこの海辺のパゴダは、夕陽を受けているわけですから、どこかの西海岸でなければなりません。
そして、その西側の海に虹が見えるという事は、太陽は東の方から差さなければなりません。
つまり、ここで虹が見えるのは朝ですから、主人公はここに旅に来て宿泊しているか、もしくは故郷なのか。

2番の歌詞の場所を特定するために、仏舎利塔・海沿い・西側・虹という言葉も検索項目に入れてみましたところ、、、。

海辺の仏舎利塔・西側の海岸線・虹・鴎の生息地域の全てを満たしたのが、ハワイのラハイナ。
ここの夕陽は世界的にも有名です。
そしてこの街には、法光寺と本願寺がありますが、仏舎利塔は無い。
唯一、仏舎利塔(浄土院のは、日本式三重塔の納骨堂)があるのが、ラハイナ最西端のプウノアビーチに建立されているラハイナ浄土院です。
ラハイナ浄土院仏舎利塔マップ
拡大してみると、完全に西側の海辺ですね。
ラハイナ浄土院仏舎利塔マップ
ここにあるのが、ラハイナ浄土院
そしてラハイナ浄土院にあった仏舎利塔がこちら。
ラハイナ浄土院仏舎利塔
残念ながら、2023年8月、ラハイナを襲った壊滅的な大火災によって焼失してしまいましたが。
※画像はラハイナ浄土院ホームページからの引用で、大火災被災後のラハイナ浄土院です。
画像右上の赤丸は私が付けました。
この赤丸の中にPagodaの表記が確認できます。
ラハイナ浄土院火災後

ラハイナ浄土院火災後
さだまさし「青の季節」歌詞ページ(歌ネット)
主人公は、このラハイナ浄土院当たりの海岸のこの写真の位置付近からですと、真正面が西となります。
ここからですと、「波間の向こうに架かる虹」はほぼ正面に見えるのです。

ラハイナビーチ
そしてその位置から左を見ると、夕陽に照らされる仏舎利塔が見えるのです。
ラハイナビーチ浄土院
余談ですが、西の方には西方浄土、ですよね。

歌の二番の舞台がラハイナだと仮定して、さらに虹を調べてみましたら、面白い事実が出て来ました。
まず、ラハイナのあるハワイは、虹の州(レインボーステート)とも呼ばれていると知りました。

ハワイには高い山脈があり、上空には貿易風が吹いています。
そこでその海の湿気を含んだ風が、暖かい気候の中で雨雲となり、ハワイの山脈にぶつかって雨を降らせるのです。
ハワイでの貿易風は北東から南西に向かって吹きますので、雨雲もその向きに沿って流れます。

その条件に太陽の動きを考慮したら、ラハイナで海上に架かる虹が見られるのは、午前中。
山側に架かるのは午後だと分かります。

なので、主人公が海の上に架かる虹を見たのは、朝。
もしくは午前中の早い時間となります。
※ちなみに人から見た場合に虹は、背中側から陽が差して、真正面に雨がある場合に出て来ます。
そしてハワイの中でも特にラハイナ周辺や西マウイあたりに掛かる虹は、地形的な影響で特に見事な虹となる場合が多いとの事でした。
海に架かる虹
ハワイでは、虹は幸運の象徴であり神聖で幸福のサインとされているそうです。
さだまさし「青の季節」歌詞ページ(歌ネット)

さて、私がこの青の季節が発売されてから、ずっとわからなかった言葉がこちら。
何故に鯨、しかも四月限定なのと、ずっと疑問で。
でも今日、本腰入れて調べたら、おそらくこれで間違いないと思われる事に辿り着きました。

まず、二番の歌詞が先述の理由で固定されたら、あとは簡単で。
ラハイナはかつて、捕鯨が盛んな港だったことが分かりました。

かつて捕鯨が盛んというなら、現在も鯨はやって来ていて、そうなると現代ではホエールウォッチングなのだろうと調べてみたら大当たり。
ラハイナではホエールウォッチングが行われているのです。
しかも世界有数のスポットとして。

そして時期ですが、ラハイナに鯨が回遊してくるのが十二月~四月まで。
つまり四月の鯨とは、これからいよいよ北へと去って行く鯨の旅立ち直前の姿。
これが仮に三月の鯨だったら、まだ来月もノンビリそこに居るのだから意味が違ってきますよね。
四月の鯨だからこそ、もういつ旅立つか分からないという境界線上に居るのです。
そういう鯨の姿を見た主人公が、鯨たちに誘われます。
「遠い季節へ」と。

実際に鯨はそこから、遥かベーリング海まで旅立とうとしているのですが、主人公がその鯨に重ねて思いを向けているのは、場所ではなく、遠い季節です。
一方向ではなく、巡りくる季節。
しかも近場の季節ではなく、いつかは巡りくるけれど、まだまだ遠い遥か未来の季節なのです。

神聖な幸福のサインである虹も架かった上での心象風景。
こんなふうに、主人公はこの地に居ながら、心だけは久遠の未来へと目を向けている。
喪失の哀しみだけではない主人公の、深い祈りも見えるようです。
ラハイナ ホエールウォッチング
※画像は、VELTRAサイトより引用
さだまさし「青の季節」歌詞ページ(歌ネット)

「すべての河は~もう一度出会えそうで」までの分析をします。

これは歌詞の一番で、植物の葉に付いた水滴がゆっくりと集まってやがて大きな河になるまでを描いた後を受けての展開です。

そうして大きな流れとなった河は、どこの河でも結局は海に注ぎ込み、一部はそこから蒸発して雲となり、森への一滴として空から注ぐ。
これは自然界の水の循環の図式ですね。

さてここから歌詞は一気に核心に向かいます。

「海辺で待てば ~ もう一度出会えそうで」
ここで明確に、自然界における水の循環と、命の輪廻とが二重写しのように描かれています。

ちなみに輪廻は、輪廻転生とも言われます。

循環しているであろう「あなたの水の粒」にもう一度出会えそうと、海辺で待つ一途さが、胸を打ちます。

あなたが今どこに居ようと、海に帰ってくるはずですからと。

さだまさし「青の季節」歌詞ページ(歌ネット)

海辺

「いつか私が ~ あなたと」までの最後の部分の分析です。

ここでの、海に帰るという表現は、もちろん、歌詞の主人公の死なのです。

ところが、ただ何も分からない死ではなく、主人公がこの生を受ける前に居た場所に還るというイメージかな。

こういう死生観の根底がどこから来ているのかは、おおよそ想像できるのが、冒頭の二人で見たシャガールの五枚のステンドグラスに描かれた物語なのでしょう。

スイス フラウミューンスター協会 ステンドグラス

だから冒頭、二人きり隣に腰かけて、でありますし。

いつか私が還ったら、あなたの隣にそっと腰かけて、となるのでしょうね。

そして二人の物語の続きを再開するのではなく、「またはじめから ~ 何度でも何度でも」あなたと作り上げて生きたいのでしょう。
それはまるで、永遠に循環を繰り返す季節の様でもありますし、自然界の水の循環に等しい生命観だと私の胸には届きました。

水滴

個人的に長年引っかかっていた四月の鯨が何なのか、今回個人的に納得できて一気にこの歌の軸に触れられた気がしています。

しかし、改めて思いました。

本当に壮大なラブソングですね。

さだまさし「青の季節」歌詞ページ(歌ネット)

ホエールウォッチング

輪廻という概念が出来たのは、ヒンドゥー教の前のバラモン教らしい。

その折にはまだ、輪廻という言葉は無く、五火と言われていたとの事です。

この五火では、死者が最初に向かうのは月で、そこからやがて時が来て雨になって地上に降り注ぎ、まず植物に吸収されて男性の体内に取り込まれて、それから男女の交わりから赤ん坊として生まれてくるとされていたようですね。

雨になり植物へという点もそうですが、五火の五がフラウミュンスター教会のシャガールのステンドグラスと同じ数というのも個人的には面白いのです。
輪廻

ロシア出身のユダヤ系フランス人画家です(1887~1985)。
最初の奥様であるベラとは、結婚生活29年、死別。
シャガール
その後ショックのあまり絵筆が取れない時期が九ヶ月続いたと言います。
この絵は、婚礼の光。
喪失のあと、最も幸福だったベラとの婚礼の場面を描いた作品です。
シャガール 婚礼の光

またシャガールの作品には、ベラを描いたものも多く、愛の画家とも呼ばれます。
空飛ぶベラ
また一方では、色彩の魔術師という呼び名も。
特にシャガールの使う青は、シャガール・ブルーと言われており、人気です。

その後、老年期に入ったシャガールは、ステンドグラス作家として、次々と作品を生み出しました。

青の季節の冒頭に描写された五枚のステンドグラス。
これを実際に見たさだまさしさんは、アルバムのライナーノーツに、こう書いてらっしゃいます。
「平等に見つめたはずなのに、青のイメージが焼き付いている」
これもシャガール・ブルーの魔術かもしれませんね。
シャガール ステンドグラス

ラハイナには、さださんが録音スタジオとして使用していたラハイナ・サウンド・スタジオがありました。
1986年4月にもラハイナに行ったという記録がありましたので、この時、ホエールウォッチングもされたのかもしれませんね。
1987年に発売されたアルバム「夢回帰線」そこに収録されている一曲「バニアン樹と白い月」の舞台が、ラハイナでした。

さだまさし 夢回帰線

古くからのさだまさしファンは、よくこういっていました。
さださんの歌は短編小説だと。
私も、その歌詞の緻密な構成の魅力に取りつかれて、高校生になった時からのファンです。

なので、時間にゆとりが出来た時に、こうして詩の(さださんの場合、作詞は、作詩と表現されます)分析をして趣味半分訓練半分で、言葉の勉強を我流で進めていました。

そんな私がこれまで全く歯が立たなかったのが、青の季節の「四月の鯨」でした。
シャガール作品に、そんなタイトルの物があるに違いないというお門違いな検討をつけて一時期必死に過ごしたのですが、解析できず。
もうこうなると、難解なパズルです。

ルービックキューブ
しかしどうでしょう。
お盆前に、昔からの友人に十四年振りに会いました。
とても遠方のこれまた古い友人から、嬉しい手紙が届きました。
そう言う事が、脳の一部の回路を始動させたのかもしれません。
今朝突然に、今なら四月の鯨が分かるかもと、何の根拠もなく思ったのです。
結果、おそらくこれだろうというモノを見つけられました。
おもしろいですね、なんだか諸々。
さだまさし「青の季節」歌詞ページ(歌ネット)
ともあれ。

ずっとモヤモヤしていた青の季節の四月の鯨問題が個人的には解決して、スッキリしました。

言っときますけど、個人的な解釈です、お含みおき下さい。

という事で、私は一層、青の季節が好きになりましたという話でした。
ああ、、、今日は佳い日だぁ~~~~!!

さだまさし さよならにっぽん

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