珈琲アロー(後編)

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☆三度目のアロー

途中、東京で4年間暮らしたことがあって、なかなか休みが取れない忙しい仕事でして。
そこでたった一度だけ正月休みを利用して帰省したことがあったんですね。
しかし正月休みに帰省するもんじゃないって思い知らされました。

陸路で移動したんですが、東京~博多間自由席超満員すし詰め状態。
そして博多から熊本までの特急は指定席で安心してたんですが、、、。
まあこれもどうにかならんのかと思いますが、どこぞのどなたかが線路に飛び込んだというんで列車が来ない。

4時間遅れで予定してた電車が来たんですけれども、こういう場合ホームに人があふれてて指定席は無効になるんですね。
これには参りました。
博多熊本間、通路に爪先立ちで乗車。
爪先立ちですよ、踵が着けないという状況、下手したら死にますね。
そんな状態で干物みたいになって到着した熊本。

年中無休のアローの珈琲は営業中と信じ向かいました。
スマホなんて無かった時代ですからね。
マスター八井さんの笑顔と、カウンターのカサブランカの香り、そして格別の一杯、忘れられません。
琥珀色の珈琲アロー

☆四度目のアロー

札幌で家庭を持って、子供が二人。
まだ幼かった長女と長男を連れてが、四度目のアローでした。

父が亡くなりまして、その葬儀です。
宮崎に入る前に、どうしてもあの珈琲を飲みたかったんです。

マスターは相変わらず穏やかに珈琲を淹れて下さり、なんと小学低学年の長女と、幼稚園だった長男も、ここの珈琲を美味しいと飲み干したんです。
アローの珈琲は砂糖もミルクも付いてない、1種1品のみ。
私が美味しそうに頂いてるのを横で見て、子供達からせがまれて、じゃあと追加で頼んだ二杯。
私の子供達、人生初の珈琲はアローで、なんですよ。

その後、八井さんから珈琲豆を一人に一つ都合三粒、しあわせのお守りとして頂きました。
とても嬉しかったなぁ。
琥珀色の珈琲アロー

☆五度目のアロー

そして五月二十三日、つい先日です。
母と妹に会うために久しぶりに訪ねたんですが、嬉しいことに変わらずにそこに有りました。

熊本の大地震。
そして食品業界も直撃したコロナ禍。
それらを乗り越えて、年中無休の珈琲はそこに有り続けてたんです。

嬉しかったなぁ。

私のコーヒー嫌いを、珈琲好きに変えてくれた店。
唯一無二の珈琲を静かに淹れてくれる店。
穏やかなマスターが穏やかに迎えてくれる店。

幼かった長男もこの春就職、ああ随分と歩いてきたんだなぁと頂く一服は、なんとも言えず沁みわたりました。

喫茶アロー。
昭和三十九年から今日まで五十八年間、年中無休。
マスターがたった一人で研鑽を続けられて、素敵な一杯を淹れ続けている店。
琥珀色の珈琲アロー

今回も、カウンターのカサブランカが香り高く、その前で琥珀色の珈琲が薫っている。
マスターがすまなそうにこう仰っていました。
「三十年ほど変えんかったとですけどですね、来月から六百円に上げさせてもらうとですよ。」
これまで値上げしてなかったんですね、そしてこの言葉がなんとも温かい。
どうです?
愛しいお店でしょ。

五十八年。
ただひたすらに一杯の珈琲を淹れ続ける。
職人気質のお店が、熊本市内に今も営業中。

もう一度。
記しておきます。

あの、しあわせの珈琲は、現在では「琥珀色の珈琲」と命名されています。

喫茶アロー、年中無休
月曜〜土曜 11:00-22:00
日曜・祝日 14:00-22:00
場所は、 熊本市中央区花畑町10-10

私の六度目のアローは、この秋を予定。
帰れる店が有るしあわせ。
琥珀色の珈琲アロー

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