本物のオタクサ

☆日本では特定不可能だったという話

シーボルトが「オタクサ」と名付け、ドイツへ送ったアジサイの苗。
どこかで生き残っていないかと思って、しばらくあれこれ調べてみた。

どうもアジサイは上手く育てれば、そんなにすぐには死なないという。
また、挿し木という方法があるそうで、枝を切って土に挿すと同じ遺伝子を持った植物が増えるのだそうで。
という事は今でも、長崎やドイツには、シーボルトが命名したオタクサそのものが残っている可能性が高い。

そこで長崎のあちこちに電話してみた。
すると、普通のアジサイを「オタクサ」と呼ぶことは有りますねと言う返事ばかり。

違う!
私が見たいのは、シーボルトがオタクサと名付けたそのものの苗。
そう思いながら、調べた調べた長崎にまで足を運んでも見た。
無い!!
どっこにも無い。

こうなったら晤郎ショーファンとしては徹底的に調べねば気が済まない。
オタクサを交配して子孫が残っているのなら、オタクサそのものをヨーロッパが、しかも堅実なドイツがうやむやにするわけがないと、もう鬼のように調べて回った。
鬼のようにという表現も訳が分からないけれど。

長崎が駄目なら、情報が集まる東京だろうと調査の地を移し、尋ね回っていたらアジサイ愛好家のおじいさんと知り合いになった。
そのおじいさんが、「オタクサは私も気になって調べていたんですが、シーボルトが持ち帰った株は絶滅したみたいですね。」と絶望的発言。

納得できない私は、食い下がって、「一株という訳は無いと思うんです。枯れたら困るだろうから増やしたと思うんです。絶対どこかに残っていると思うんです。」

おじいさんは実は凄い方で、それは後で知った事なんだけれど、おじいさんの長年の人脈を伝ってオタクサのことをもう一度、有るんじゃないかという前提で探してくれたみたいで。
数ヶ月後、電話。
「在りましたよ、シーボルトが持ち帰った本物のオタクサ。文献や特徴、地理的にも確実です。ドイツに有りました。」
おじいさん、ドイツや東京の有名大学教授とも連携して、、、。

シーボルトが欧州へ持ち帰った苗。
そのほぼ間違いない分身が有ったというだけでも嬉しいのに。
更に数ヶ月後。
送料だけで、本物のオタクサが私の手元に届いた。

これがその苗から最初に咲いた花。

フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト。
今から200年前に、長崎のアジサイにオタクサと名付けて、そのひと苗をヨーロッパに持ち帰った人。
学術的にどうのこうのと言う話ではないけれど、私の手元に200年の浪漫が今年も蕾を付けたという六月の始めの話。

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