映画:緋牡丹博徒 お竜参上

昨日、日高晤郎さんの絵と、サインという記事を書きました。
そこで、その絵が「緋牡丹博徒 お竜参上」という作品の一場面だという事が分かり、今度その作品を観てみますなどと書きましたが、、、。
思い立ったが吉日。
という事で昨夜、アマゾンプライムビデオを検索してみましたら、400円で視聴可能という事が分かり、早速鑑賞。
緋牡丹博徒 お竜参上

任侠映画というのは、私はこれまで「ヤクザ映画」だと思って敬遠し続けてきました。
ヤクザ組織同士の血で血を洗う様な抗争など、興味なかったからです。
つまり、任侠映画=ヤクザ映画だと思っていた私は、緋牡丹博徒を本来なら一生見ることは無かったでしょう。

しかし、とあるお店で日高晤郎さんの絵が目に留まり。
調べてみると、その絵が、任侠映画の名作と言われた「緋牡丹博徒 お竜参上」の名場面だと分かったのですから話は変わってきます。

晤郎さんは、あんなに暴力団を嫌っていた方でした。
親交のある歌手が暴力団とほんの少しでも関わっていたと伝わると、これまでの関係をスッパリと断ち切っていた方です。
それなのに任侠映画の一場面を描くとは、、、。
不思議に思い調べてみました。

勿論、任侠映画全盛を御存じの諸先輩方からすれば当然の話でしょうが、私はてっきり任侠映画=ヤクザ映画だと思っていたのです。

まず「任侠」とは何か?
これは簡単にいうと、義理と人情。
江戸時代に、それは武士にとっては武士道の一部であったし、それが庶民にとっては任侠道であったそうです。

侠客という言葉があります。
これの大元は室町時代。
普通の人と大きくかけ離れた傾奇者(かぶきもの=派手な格好をした無法者)から来ており、義理と人情を大事にしつつ、博打や芸能の元締め稼業などをして生計を立てる人たちを博徒(ばくと)と呼んだらしいですね。
つまり任侠のある博徒は、けして弱い者いじめをせず、逆に助けたりします。

一方で、任侠の無い博徒集団も居るわけで。

緋牡丹博徒は、グッとくる場面が随所に散りばめられた任侠映画でして。
観終わって、胸の内に熱く残るものがありました。
緋牡丹博徒 お竜参上

博打はサイコロや花札を使いますが。
その花札での博打に「おいちょかぶ」という物がありますが。
これで8と9の目が出ることを、ポルトガル語(オイトとカブ)が語源となって、おいちょかぶと言うんだそうですね。
それで博打の途中、8+9=17になったら良い目で、普通はここで勝負を止めるところなんですが、ここで欲が出てもう一枚引いて3が出たとします。
そうすると17+3=20という事で、おいちょかぶの決まりでは、20=0と計算されるので最低得点となり一気に大負けとなるのだそうで。

そういうわけで、堅実に生きない博打中毒みたいなのを8+9+3,つまりヤクザと言ったと言います。
一方で、鎌倉幕府が制定した、商人組合(座)への税金「座役」の事を商人たちは逆さにして(隠語で)「役座」と言ったのだそうですね。

さて映画ですが、義理人情を大事にして弱きを助け、強き(間違った強さ)を挫くという任侠映画に対し、ヤクザ映画というのも作られ始めました。

これは時に戦後、日本のヤクザから任侠道が薄れ、暴力団と呼ばれるようになり始めた頃に、それを題材にして描かれる暴力映画を指すらしいです。
それが、制作者側と観客の劣化で(敢えて言います)、任侠映画もヤクザ映画も同じ一線上で語られ始めて混乱を招いているそうで。
いやはやなんとも。
調べていて愕然としました。
劣化ですね。
映画

そんなことを踏まえて、昨夜、アマゾンプライムビデオで観ました緋牡丹博徒 お竜参上。
お竜さん、優しい、そして所作が綺麗。
熊本弁も付け焼刃では無いし(九州生まれの私が聴いても自然でした)、耐えて引いて、もうどうにもならなくなった時には、最後の手段として命がけて戦う。

準主役の菅原文太さんも、たまらなく良い。
けして暴力的な人物では無いし、優しい。

ただ悪役は、どうしようもない外道でしたが。
緋牡丹博徒 お竜参上

それと、勝新太郎先生のお兄様、若山富三郎さんが良いところで登場もされる。
お竜さんの兄貴分(下心ちょっと在り)として。

この作品が世に出されたのが1970年3月。
日高晤郎さんのもう一人の師、市川雷蔵先生の訃報から8ヶ月後の事。
師匠逝去を機に、歌手を廃業し、テレビドラマやレポーター、そして声優業を始められていた頃の作品です。

晤郎さんがあの絵をあの店に贈ってらっしゃらなかったら。
またオーナーがあの絵を、お店の真ん中に飾ってらっしゃらなかったら。
私は多分一生見る事の無かった作品でありました。
藤純子 菅原文太

あ、そうそう。
晤郎さんの絵と同じ場面がありましたので載せておきます。
緋牡丹博徒 お竜参上
いかがでしょう?
そして晤郎さんの絵が、菅原文太さんであり、どこか日高晤郎さんでもあるのは、やはり絵画の妙でもあると改めて思いました。
いやいや、本当に素晴らしい映画作品に出会わせて頂きました。
お別れして数年になりますが、今でも日高晤郎さんに感謝です。
日高晤郎さんの描いた絵

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