言葉拾い~5
☆ドイツ旅での出来事
かつて私が真冬のドイツに行ったときの話。
ベルリンだったかな。
日本語以外しゃべれない私が、なぜかビアホールで見ず知らずのドイツ人の皆様とおっきなグラスで飲んでいた。
詳細は省くが、あっちの言葉がしゃべれないので食堂を探して身振り手振りで「お腹空いた」と行きかう人に伝えていたら、グリム童話の登場人物みたいなおっさんが「よ~しよし、一緒に行こう♪」と連れてきてくれたのだ。
ざっと30人は居たと思う。
メニューは出されたとは思うが、読めない。
察して先ほどのグリム童話とその仲間たちが私のためにチョイスしてくれた。
それはま~~あ、大きなグラス、それに並々とビール。
それにジャガイモの煮たの大量と、大きなボイルソーセージと、何か加工した大きな豚肉の塊(6割脂肪のぶよんぶよんしたやつね)。
いやいや待て待て何々、これら全部でお幾らなの??と内心焦る私。
そのうちホールは50人ぐらいに増えてみんなで肩を組んで歌い出したの。
勿論否応なく私も肩組まされて、右に左に揺れながら、なんか知らない唄を楽しそうに歌ってる。
ビアホールの常連さんはマイグラスだろうか、こういうの持参してましたね。
多量の料理を食べて飲んで揺らされていたら、尿意が猛烈に駆け上がってきたんです。
そりゃそうだ。
で。
ちょいと中座してトイレに。
すると便所の男女の入り口の境に、、、、あ、便所の男女のって面白い響きですね、、まぁそれは置いといて。
入口の境に、小さなおばあさんが椅子に座ってうつむいてる。
おばあさんの前には紙コップが一つ。
私は、検尿かと思ったの、本気で、少し酔ってたからね。
でも近づいてみると、お金が入ってる。
むき出しのコイン。
それで、これはいわゆるチップというやつだなと思ったんです。
紙コップに尿が入っていたら検尿で、コインならチップ。
いくら酔っててもそれぐらい分かる。
それでコップの中のコインに合わせて、同額を一枚入れてトイレへ。
それで用を済まして出る時、またおばあさんの横を過ぎますよね。
あれ~、って迷ってまたチップ入れました。
そうかドイツってしょんべん、有料なんだと怖くなりましてね。
再びホールに戻ると、料理もビールも追加してくれてて、おいおいグリム童話、やめてくれよしょんべんで絞り出して搾り取られた挙句、さらにお金搾り取る気か!!と内心思ったんですがそこは日本人、ニコニコ笑ってそこから二時間もおりました。
帰るときびっくり。
全額、グリム童話が払ってくれたんです。
えええええ~~!!ってなもんですよ。
日本語で「ありがとうございます」って何回伝えたか。
もう感謝感謝感謝でしたね、あの時は。
☆感謝を形で示す気持ちは、随意持っていたい。by日高晤郎
日高晤郎さんの著書、こころによりくもりのちはれ、にこういう記述があります。
要約しますと。
。。。。。。。。。。。。。。。。。
海外の見てある記物はよく読むが、チップ制度のわずらわしさに触れているものが多い。
確かに、半ば強制化されたものはどうかと思うが、日本にもチップの習慣はある。
それを「ご祝儀」と呼ぶ。
こちらは制度化されたものではなく「随意」という点で、優れていると思う。
そのご祝儀は必ずしも現金であるという必要はないが、感謝をカタチで示す気持ちは、随意に持っていたい。
私は、そういう「ご祝儀」のオヒネリがとぶラジオ番組を目指している。
。。。。。。。。。。。。。。。。。
私のドイツ旅から30年近くになる。
グリム童話おじさん、ご健在ならば80歳ぐらいになると思う。
晤郎さんのこの言葉に触れて、グリムさんが無事にコロナ禍を乗り越えて今も元気にビアジョッキ片手に歌っていたら嬉しいなぁと思う。
ちなみにトイレのあのおばあさん。
トイレ掃除をして、そのチップで生活費を稼いでたんですって。
後年、ドイツに詳しい友人から教えてもらったことです。
そうかそうか綺麗に使わせてもらってありがとうという意味が、あのトイレチップだったんですねと、これも後年教えてもらいました。
日高晤郎著 こころによりくもりのちはれ
昭和63年12月刊より、今日は言葉を拾わせていただきました。