情報処理の概念である「入出力」
でもここでは身勝手にちょっと加工。

入出力。
これ、手紙を書くときにとても大切。

まずは入力。
毎週の手紙を書くために、晤郎さんに伝えたい情報を常にキャッチできるよう、心のアンテナを目一杯拡げておく事が大事。
アンテナを拡げるだなんて何とも抽象的だけれど、要は、目・耳・鼻・舌・触の五感を意識して、そこから得られる莫大な情報を自分なりに取捨選択して、必要な物だけ自分の心の整理棚にタグ付けして並べて置く事。
極端に言えば、テレビ見てても、本読んでても、スマートフォン見てても、買い物行っても、散歩してても、仕事してても、情報なんてどんどん入ってくる。それを意識していれば、面白い。そこはまるで砂金堀り。川面に揺らす箕の中には玉石混交。精進して熟練の域に達して、砂金だけを拾い上げれば良い。
なーんて、簡単に言うけれど、難しいっちゃあ難しい。
私も情報の砂金堀りの達人になれるよう、現在でも日々精進中。

次に出力。
晤郎さんに失礼なく伝えられるように、入力で得られた情報の砂金を分かりやすい言葉で綴って行く。
その言葉の選択も重要。またそれらの言葉を重ねていって成立する文章には、「流れ」が必要。
文章がブツンブツンと途切れがちになるのは良く在る事。これは、考え考え、筆を止めて次の文章を仕上げていく場合に良く起こる。つまり、筆を止めて考えている間に、その前の文章の流れがリセットされてしまうからだ。
出力には、勢いも必要になってくるのだと思う。
これまた私も、現在精進中なのである。

さあここまで、入力と出力とを書いてきた。
あと一つある、手紙を書く上で大事な事。
ここが心臓部。
入力した事柄を、そのまま文章加工して出力していたのでは芸がない。
私は、入力と出力の間に、自分なりの人生哲学を毎回織り込むようにしていた。
そう、大事なのはその人の人生哲学。
一見難しそうに聞こえるが、実は簡単。
その人が、人生をどう考えているかという事だから。
別項で書いたが、そこのポイントに絞って、晤郎さんは良く晤郎さんの哲学を重ねて回答して下さっていた。
私が晤郎ショーに手紙を出し続けた20年間は、故に手紙の修行期間だったのだと感じている。
手紙の構成要素は、「文章力」と「観察力」と、その人の「人生哲学」である。
晤郎さんは私の、その三点を20年かけて磨いて下さった。
そして私は、多くの晤郎さんファンと同じく、修行の場を失ったのだ。
それも、事実。