22時の街の灯り
☆日高晤郎さんの歌が沁みる夜
もう四年前になる。
晤郎さんの体調が急激に崩れ始めて、私はお別れの時が近いと確信を抱いた。
変な話と思われるかもしれないが、だからこそ、晤郎さんの命が私達の傍にあるうちにと、私は旅に出た。
行く先は関東。
ういろうの在る小田原。
曽我兄弟の太刀の鎮座する箱根。
そして歌舞伎座。
旅の途中。
スタジオ仲間から「晤郎さんが一時入院された」との報。
そんな時、旅先で一人聴いていたのが「街の灯り」
お別れが近いから傍に居たいと思うのも正しい。
けれど私は、離れて学ぶ姿勢をお伝えしたかった。
「晤郎さん、私は学び続けますから。」と。
旅先から二通、手紙を出した。
淡々と、ただ淡々と。
もう四年になる。
四年前の今日、私は22時に、晤郎さんの街の灯りを聴いていた。
晤郎さんの人生の終焉と、旅の夜と、私の思慕を重ねて。
晤郎さんの歌声は、今日は格別違う色に聴こえてきた。
私も少しばかり、成長したようですよ晤郎さん。
ほんの少しだけですけれど。