大小霰(だいしょうあられ)
☆せき呉服店さんの想い
昨日の雪駄の続きです。
念願の長距離用雪駄(そんな言葉は無いんでしょうが)をようよう手に入れて、お店を後にしようとしたときに、せき社長が一瞬姿を消されたんです。
何かお店の中で選んでらしたという感じ。
ああ、急ぎのお客様からの何かかなと思っていたのです。
ご挨拶を済ませ、玄関から出た私を追いかけてせき社長。
「これから暑くなりますから、どうぞこれをお使いください。」と手渡してくださったのが一面の扇子。
驚いてる私に社長はこう仰いました。
「着物で京都の町を歩かれて、しかも晤郎さんの聖地巡りをされたんですから。」
「和彦さんとは商売でお付き合いしてるんじゃないんです。晤郎さんからのご縁でお付き合いさせていただいてるんです。」
嬉しいやら有難いやら申し訳ないやら胸が熱くなるやら。
せき社長とその向こう側の晤郎さんに頭を下げ、扇子を受け取られていただきました。
そして家に帰って扇子を開いてみました。
しばらく涙が止まりませんでした。
その柄は「大小霰」
江戸小紋と呼ばれる柄の代表的なものの一つです。
単色型染め、と言うんです。
お武家の裃や、町民の羽織や小袖に好まれた柄。
「霰(あられ)」を表す大小の白い点模様を、一面に散らした図柄です。
天から落ちてくる勢いや勇ましさ。
地に落ちて跳ね返る賑やかさや力量。
それはどこか祭祀に似た「力」を感じさせる図柄なんですね。
扇骨にも細工がしてあって、実に奇麗です。
で、私がなぜ泣いたかですが、せき社長がわざわざこの大小霰の扇子を選んで下すって、それについて何も言わずに手渡して下すったこと。
物凄い会話なんです、これが。
「大小霰」
だってこの図柄、晤郎さんが大好きだった柄なのですから。
しかも扇骨の多い京扇子。
着物を初めて着つけて歩いた町、京都。
晤郎さんの聖地巡りをした町、京都。
芸人、日高晤郎さんの原点の町、京都。
どうです?
この無言の会話。
泣かない方が噓でしょう。
せき社長、有り難うございます。
一生、大切にします。
一生、私なりに、晤郎さんと共に歩いてゆきます。
そう改めて誓った金曜日でありました。