珈琲アロー(前編)

☆熊本市にある喫茶店

職人って言葉があるでしょ。
私ね、思うんですけど、この職人という言葉には「昔気質の」という言葉が付くとがぜん色気が出てくる。

熊本市に、「珈琲アロー」という小さな店があります。

私が初めてここを訪れたのは、友人誘われて。
その友人というのが、私の親友が思いを寄せていた女性で、複雑なんですけど私とその彼女と二人きりで会うことになった。
いえいえ、けして今あなたが想像したことではないです!
私の親友にも報告しての邂逅でしたから。

その時分は私、まだ宮崎県に住んでいました。
彼女は熊本で生まれて熊本育ち。
人柄の良い方でしてね。
なんかサラダの美味しい店に寄った後、立ち寄ったのがこの店でした。

マスターは八井さん。
品の良いマスターで、ただただそこの珈琲が美味しくて驚いたんです。
なにせその頃の私ときたら、コーヒーはどちらかと言うと嫌いでしたから。
お付き合いで足を踏み入れただけだったんです。
琥珀色の珈琲アロー

☆二度目のアロー

時は流れ、親友とその彼女とは別の人と結ばれ、私は北海道へ。
その後彼女は新婚旅行で旦那さんと一緒に私を訪ねてくれて、親友は私を結婚式に招待してくれて結婚式前夜新婦も一緒に浴びるほど飲んだ。
こうして振り返ると私は、人に恵まれているんですね。
有り難いです。

さてそんなこんなで私がアローを二度目に訪れたのは、東京で暮らし始めた頃。
大好きな祖母に会うために6年ぶりの帰省の途中。
マスターは相変わらず静かな笑顔で珈琲を淹れて下さり、こちらも静かに頂いたものです。

その後30分ほどお話できたのですが、それが衝撃で、この日以降、アローのコーヒーは「珈琲」と漢字表記することになります。
いえ、単なるマイルールというやつですが、私にとってこういう言葉は案外重要でしてね。

珈琲アローが開店したのが昭和39年(1964年)、東京オリンピックがあった年です。
私が1歳の時。
そんな私がこの時は27歳。
そして驚くなかれ、この店を一人で切り盛りしてる八井さんがこの時点でお店を休まれたのがたったの3日。
それも大切な方の葬儀とかそういった理由で、のみ。

一人で切り盛りしているので、開店中に食事は摂れませんよね。
でも、珈琲を飲んでいるので健康を損ねない。
八井さんは、そういう珈琲を研究されていて、そういう珈琲を提供し続けてらしてる。

メニュー表もない店なんです。
何故なら、たった1種の珈琲しか出してらっしゃらないから。
だから入店してカウンター席に着いたら、すっと、一杯の珈琲が目の前に。

感動しましてね。
この珈琲の名前を尋ねたんです。
すると八井さん、ほんのしばらく考えてこう仰った。
「名前、、、付けてないですね、、、そうね、、あえて言うなら、しあわせの珈琲かな」
そして照れくさそうに微笑んで。

2回目の訪問で、私はすっかり魅了されてしまったんです。
琥珀色の珈琲アロー

ちょっと長くなったので、残りは明日書きますね。
< 珈琲アロー2へ続く。

喫茶アロー
〒860-0806 熊本市中央区花畑町10-10
月曜〜土曜 11:00-22:00
日曜・祝日 14:00-22:00
(年中無休)

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