晤郎さんが認めた音色

☆木村善幸コンサート「祈り」in札幌

さていよいよ本題。
コンサート内容の感想。

大きく分けて4つ。
一つは仁和寺のお坊さん。
一つは筝(こと)の小田さん。
一つは木村さんのお弟子さん達。
一つは木村善幸さん。
木村善幸コンサート「祈り」in札幌

1,仁和寺のお坊さん
声明をあんなに間近で、しかも閉鎖空間で体感できたのは何よりの財産です。
日本音楽の礎の一つともなったといわれる声明は、お坊さんによる言わば声楽の面もあります。
祈りを内包した「ゆらぎ」を伴う中国由来の声楽。
晤郎さんを追悼しているようにも聞こえ、胸に迫るものがありました。
これだけで来た甲斐があるというぐらいの感動でした。
また、般若心経と木村さんの和太鼓とのセッションは、寄せては返す波のように互いの音色がその場の風で絶妙に組み合わさり、これまた至高の味わいでありました。

2、筝の小田さん。
実際にこうして完全に視線の届く範囲で筝演奏を見るのは初めて。
京都仁和寺では、舞台との高低差や距離がありましたし、アンプ経由の音も重なっていたので別物。
繊細で清楚で芯の通った筝の音色と、演者左手の調弦と右手の爪弾きの絶妙なこと。
弦を持ち上げている「柱」も、演奏しながら微調整していくという事、今回初めて知りました。
小田さんの筝に触れて、日本ってやっぱり良いなと感じたのが、私の素直な感想です。

3、木村さんのお弟子さん達
前にも書きましたが、喜田さん、水落さん、遠藤さん、どなたも格段に進化なさっているのに胸を撃ち抜かれた思いです。
この表舞台に立つまでに、どれほどの鍛錬があったのかと思わずこちらが目を見開くほどに、「音」が一層活き活きとしていました。
そして御三方がそれぞれに一曲を紡ぎだすとき、互いの音が寸分たがわず滑らかに組み合わさっていて、まるで三人が一人に、、つまり一体化した音色になっている事。
そして星月夜、これにはやられました。受け継ぎより輝かすといった気概がまっすぐに伝わりました、胸いっぱい。
もうこうなったら、お弟子さんだけのコンサートに迷わず行きます。
木村さんを受け継ぎさらに拡げようという思いの伝わる音でした。
本当に掛け値なしに素晴らしかったです。

4、木村善幸さん
従来の津軽三味線と和太鼓は、やはり冴えわたっていました。
そして私の受けた感じでは、あの無観客コンサート、そして京都仁和寺コンサート、そして今回と、より一層木村さんの音に体温が加わるようになったという気がしています。
表現が変かもしれませんが、敢えて。
covid-19以前は、「鮮やかで力強く躍動感あふれ生命力みなぎる」という木村さんの音の世界が「寄り添い穏やかに微笑み、でも揺るぎない」といった風にシフトしていったように感じてます。
あくまで私が感じたことですが。
それと私は木村さんの奏でる「十三の砂山」が大好きで、今回はさらにそこで描かれる世界が深く切なく、それでいて生きていく力を伝えてくれる澄んだメッセージ性を伴って伝わってきたんです。好きな楽曲だけに肌に粟の生ずる思いでした。
それと思いっきり不意打ちだったのは、木村さんの筝演奏。
え?まさか、、、とこちらが驚き戸惑っている間に始まった演奏。
開場のお客さんが全員魂を鷲掴みにされた「現代筝新奏法~鬼平が歩く」
これ、ご存じない方が多いと思いますが、聞かなければ人生の損失です、というぐらいに美しく艶やか。
この木村善幸さんも、本当に晤郎さんに聞いていただきたかったなぁという名演奏でありました。
木村善幸コンサート「祈り」in札幌

☆晤郎さんが認めた演奏家の歩く道

木村善幸さんは、晤郎さんが信頼し認めた演者です。
その木村さんは今でも、晤郎さんへの思慕を胸に日々活動してらっしゃいます。

今回のコンサートでも舞台上で「日高晤郎さんにも、今日のコンサートを見ていただきたかったです。」と仰ってました。
全くその通り。
私もそう思います。
日高晤郎さんに、この日の舞台を見ていただきたかった。
木村善幸コンサート「祈り」in札幌

もちろん、私は木村善幸さんのファンです。
と同時に、日高晤郎さんのファンです。
なので私がこういうコンサートを見たいという気持ちと同時に、晤郎さんの分まで見届けたいという思いがあるんです。

多くの楽器がそうでしょうが、特に津軽三味線、そして和太鼓は神との交信の楽器であったというのが大元です。
もし、これを読んで下すってる日高晤郎さんファンのあなたが木村善幸さんの演奏に触れる時、「私を経由して、空の晤郎さんに木村さんの演奏が届いてる」という風に耳を傾けてみてください。
きっと、木村さんの演奏がもう一段、別の光を帯びると思うのです。

是非に、とお薦めいたします。
木村善幸コンサート「祈り」in札幌

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